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乳色の目薬

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青春18きっぷの季節にあいなりました。

今回は、なんかの記念絡みで、通常1万5千円のところ、8千円になるんだとか。
最近は、バスがかなりお得なので、単純に移動を安く速く済ませたいならば、
バスに軍配があがると思うんですが、5枚綴りの切符を、ひとたび「旅」目的へシフトすれば、
なんと、まぁ広がる日本列島!

はじめて、18きっぷを手にしたのは、確か10代後半の頃。
友人を道ずれに、とりあえず東京に行ってみようと。
目的なんてありもせず、地元・大阪を出たのは、無謀にもお昼を廻り済み。

なんだかんだ喋っているうちに、名古屋着。
なんや、楽勝やん。とお気楽に車窓を愛でる、まだまだ素朴で抜けてる二人組。

幾つもの知らない川や山、巨大な駅小さな駅、
無数の民家やビル群との一期一会を果たしながら、
どんどん無口になってゆく、元・弱小剣道部サボリマスター達。

お腹が痛くて・・・盲腸かもしれません。病院へ行くので・・・。
どっちの腹?こっちです(たぶん)・・・・。
盲腸、反対やで。・・・あぁ・・・じゃあやっぱりこっちでした・・・。
道着に着替えた先輩に、人体の不思議を一つ学び終え、
神妙な顔つきで、いざ行かんカラオケBOX。ええ、懸命に頑張りましたよ、自分の課題曲。


なぁ・・・自分、なんでそうなん?
我のことはおくるみに大事に巻いて、隣りで軽く寝息をたてる友人にぼやく。揺さぶる。
へっ・・・もう着いたん?って、ここどこよ?
さぁねぇー。じゃあオヤスミ。あと、10個くらいで次の終点やから起こしてくれ、と丁寧に依頼。
怒るとひたすら黙る彼女をよそに、ぬくぬくと誰も知らない国へ櫂をこぐ。

あれ、富士山?
ちゃうよ、まだ静岡入ってないし。
いや、さっき、静岡県って書いてた。
じゃあ、静岡なんやわ。広いねー、静岡。
あれ、茶畑?茶団子、食べよう。
駅の売店・・・閉まってるやん。この駅、何分まで停車してんの?
私が知ってるわけないやんか。
そうねぇ・・・聞いてきたら?改札で。・・・その間に、電車が出発したら?
そら、困るねぇ・・・でもいい加減、ひとりになりたいしなぁ・・・。

人一倍、アナログ弥次喜多。まさか携帯なんて、持っちゃねえ。
しかも道中は真逆ときたもんで。

黙る喜多さん。
仕方がない・・・。あんたの前の男の話、もっぺん聞かせておくれよ。
あのセカンドバックの話、なんべん聞いてもしびれるんだわ。
ヘビ柄だっけ?あ、ヒョウだったか。別にどっちゃでもいいんだけどねぇ。
いや、だから・・・あっ、富士山!

・・・みたいな山も、いつしか遠のき、辿り着いたは、何故だか渋谷。
それで、どーすんの今から・・・。
危うく、現代渋谷駅周辺の伊能忠敬になりかねない程、夜の帳を歩く。
付紐小僧に出遭うまえに、どこでもいーんだよ。
でも、安くて、快適な場所。

ホテル街を五周ほど巡る。
迷い家に連れ込まれそうな、客引きの中年女性と何度も目が合う。
和室・風呂付きで、3千円だって。
きっと、次に目覚めたら、山の中で落ち葉に埋もれてるんだよ、私達。

奥ゆかしき優柔不断さにはこの際、当人達もろとも眠ってもらおう。
その界隈で、二番目に安いホテルのドアをくぐる。
フロントで、意味もなく出してみる低い声。
お咎めを恐れた客人に、「105号」と、あっけなく無機質な手が差し出された。

まだ、カラダが揺れてるみたいやわ、弥次さん。
確かに・・・。でも、気のせいだわ、喜多さん。

開いていた窓は閉めてみた。けれど、何故。
「次、ヒロミゴー行きます。フォー!」
午前二時。真隣りのデラックスホテルの上層階、見知らぬ誰か達のショーは続いた。


そんなこんなで終わった東京詣。
一人も含め、目的もそれぞれで、以降、四度はカウントされたか。
その間、駅で寝たり、ヒッチハイクに失敗して、やっぱり駅で寝たり、色々色々。



閑話休題(まだ続く?)。目を西に向けて、広島に行ったときのこと。

サウナで一晩明かせると知り、嬉々と誰もいない浴場でくつろぐ。
脱衣場に出たところ、すでに先客がいた模様。

推定60歳くらいのその女性は、まるで我が家のように団扇をあおぎ、
もう片方の手には缶ビールが握られている。

目が合ったのをきっかけに、牛乳を振舞われ、しばし談笑。
見た目よりも、おっかなくないと思って、調子に乗った私。
「1枚、写真を撮らせてくれ」と。

さっきまでの和みムードが一転、短い沈黙。
軽く首を横に振りながら、なんとも言えぬ複雑な笑顔を残し、女性は再び浴場へ。

顔は写さないから。とっさに口に出しかけ、胸をふさいだのは失望。
そういうことでもないんだわ・・・。

天に昇ってゆくかすれた藍色の龍。
まだらに曇った大きなガラス越し、もう二度と会うこともないんだろう、
その人の小さな背中を目で追いながら、まだお礼も言っていない牛乳瓶を握りしめた。

一人、いつからかどこからか遠くはぐれてしまった弥次さんの、愚かな旅路、恥の一つ。

by tanta720 | 2007-02-12 05:13 | 妄想旅 | Comments(0)